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zoom RSS 現代を読み解く手がかり〜「軍事力×外交力」

<<   作成日時 : 2011/01/31 14:13   >>

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画像“フンドク”のすすめ」について
二人の知者のお薦めということで手にした書。

ある学生が就職採用の面接で、「学生時代に読んだ本の中で、最もおもしろかった本は何ですか」と聞かれ、この本を即答したとのこと。そして二次面接に進んだところ、その面接官に最初の質問をした人がいて、「私も読んでみました。ほんとにいい本ですね。良い本を教えてくれてありがとう。」と言われたと紹介されている。

この時代を扱った歴史小説としては、司馬遼太郎「坂の上の雲」があるが、同書が当時の陸軍と海軍で活躍した秋山兄弟を主人公にしているのに対し、本書は、戦争終結に外交面で尽力した小村氏の目線で追っている。
小説の主題は、「日露戦争の終結に向けた交渉に臨んだ小村寿太郎が背負った困難や、明治国家の意味、そしてマスコミのあり方や情報・・・」と、なかなか奥深い内容を秘めている。
 ★「就活のまえに〜良い仕事、良い職場」 中沢孝夫 筑摩書房

折しも、連日エジブトでの混乱が報道されている今、本書を読んであらためて民衆パワ−を実感した。
現代日本を読み解くうえでの手がかりの一つとして本書をあげている佐高信氏は、次のようなコメントをされている。

「日露戦争に勝って、日本はアメリカの仲介でポ−ツマス条約を結ぶわけだが、その内容に不満を抱いた民衆が日比谷焼き打ち事件を起こす。矛先は全権大使だった外相・小村寿太郎に向けられた。各新聞も「この屈辱」「敢えて閣臣元老の責任を問ふ」「遺る瀬なき悲憤・国民黙し得ず」と、それを煽りたてる。
吉村の記す如く「国民は、家族の働き手である男子を戦場に送って戦病死で失い、傷者を抱えねばならなくなっていた」し、「軍費の調達にこたえて公債を買い求め、重い非常特別税の圧迫をも受けていた」からである。
怒りは講和を斡旋したル−ズベルト(米国大統領)にも向かい、群衆はアメリカ人牧師のいる教会や米国公使館をも襲撃した。東京にいる通信員から世界に発信されたニュ−スには「ル−ズベルト大統領の好意あふれる斡旋に対し、日本人は、感謝とは全く逆の暴言と愚行によって応えた」と書いてある。まさに外交は“内交”であることを小村は身をもって体験したのだった。」
 ★佐高信「現代日本を読み解く200冊」(金曜社2010)

読み進む中で描かれている、日露戦争の開戦後、旅順、奉天会戦、さらに日本海戦での勝利の祝賀ム−ドに湧く東京の街の様子が興味深い。

 「号外の鈴の音が町々を走り、家々には国旗がひるがえった。夜になると提灯行列が組まれ、
  人々は提灯をふり上げて万歳を叫び合った。」
 「国旗は、国民になじみ深いものになっていた。明治政府によって日章旗の制式が決められたが、
  公的機関に掲揚されるにとどまっていた。日清戦争の勃発と同時に国民の間に普及する。
  勝利をおさめる度に、家々に国旗が掲げられる。」

この小説では国旗が、国民の意思の象徴として効果的に描かれる。和平交渉に出発する小村を激励するために家々に掲げられていた国旗が、交渉を終えて迎える時には全くなくなっていた。この世を去るとき、国民からは弔意すら示されなかったという事実に、時代の空気に敏感な民衆の、時に熱く、時に冷たい意志を感じる。

また別稿になるが著者が、講和条約締結後 小村が随員に語った言葉を、太平洋戦争の勃発を予言するものとして紹介していることにも注目される。
「日米間には広大な太平洋が横たわっているがね交通機関の発達につれてその距離は短縮され、やがて隣国として武力衝突をすることになるだろう」(東京新聞 1986.7/7)

今一つ、司馬氏が明治の軍人・秋山兄弟へのロマンを「坂の上の雲」に書きとめたように、吉村氏は外交官・小村寿太郎にロマンを感じ、この小説の筆をとったのだろう。一作家が歴史の実在者を実名で書く場合、とりわけ近現代史にあっては、歴史的事実からの検証が免れないことはいうまでもない。
 その意味から、日本−東アジア−ヨ−ロッパ−アメリカというグロ−バルな構図の中で、東アジアとりわけ中国・朝鮮半島と日本との関係(韓国併合など)をきちんと見ておくことが求められる。

 「地勢上、日本の安全をおびやかす清国、韓国へのロシアの軍事的進出を牽制する意図で締結した日英同盟。」
 「日本は、戦前、ロシアの露骨な極東政策に危機感をいだき、戦争回避のため外交交渉を通じて妥協点を見出すことに全力をかたむけた。しかしロシアは、日本の交渉を無視して清国との間に約束した満州からの撤退に応じず、逆に兵力を増強し、韓国への圧力もたかめていた。よって日本政府は自国の存亡を賭けて開戦に踏み切った。」

 ・・・などの記述も、日清、日露、第一次、そして第二次世界大戦へと連綿と続く日本の不幸な歴史の中に位置づけながら冷静に読み解いていかなければならない。

当時、兵の間で交わされていたという「補充兵は消耗兵、進軍ラッパは冥土の鐘」の言葉からは、あらためて戦争の愚かさがストレ−トに伝わってくる。
 「軍事力より外交力」
読後、こんなキ−ワ−ドが心に残った。
現代を読み解くいくつもの貴重な視点を提供してくれる一冊である。

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