日本を元気にする本から
■ある雑誌で紹介されていたのがきっかけで手にした一冊。プリンストン大学教授の著者は、2008年ノーベル経済学賞を受賞。貿易のパターンと経済活動の立地に関する分析の功による。
米ブッシュ政権には強力な批判を浴びせていたとのこと。
1980年代のバブル不況後の日本の経済を古典派経済学的なモデルを使ってモデル化し、流動性の罠に落ちていることを指摘する。本著では、流動性の罠から脱却し、インフレ期待を起こす政策、つまり調整インフによる景気対策として財政拡大による自律的回復の達成をめざすことを提唱している。
■流動性の罠とは?
・名目金利がほぼゼロなので、金融政策が威力を失う
・現金と債券とがほぼ完全な代替物になってしまうためにマネ-の量がどうでもよくなってしまう
少しわかりやすくいうと・・・
「いまの日本は不景気だ。みんな、お金を使わずに貯金ばかりしている。
だから、本当なら金利を下げて景気をよくしたい(金利を下げることが景気刺激策)。
ところが困ったことに、いまの日本の金利はほとんどゼロだ。
金利はマイナスにはできない。だって金利マイナスなら、預金がどんどん目減りする。
現金でたんす預金するほうがよっぽどまし。
だから、いまの日本では、金利を下げて景気を刺激することはできない。
でも、もしそれができたら・・・
たとえば、もし今後一年で物価10%があがると思ったら、早めに買い物をしようとするだろう。
貯金するより早めにお金を使おうとする。
だから、それをやろうじゃないか。」
⇒インフレ期待を起こす⇒調整インフレ
■マスナス金利がインフレ期待と同じ経済効果だと指摘するあたりは、おもしろい。
ただ、金利とインフレ、購買と貯蓄というシンプルなとらえ方でいいのだろうか。
企業の借金、つまり金融機関からの借り入れるによる投資と、
一般庶民の、住宅などのロ-ン(借金)による購買をどうとらえるかということも、
現実の経済活動を考える上で忘れてはならない視点である。
企業にとっては、確かにインフレ期待は積極的な投資行動につながるかもしれないが、
庶民にとっては、仮にインフレ期待があったとしても、かつての高金利時代のロ-ン返済で、
現金による購買もままならないという状況にあることも考慮に入れておくべきではないか。
「よもや自分の生涯でこういう危機に出くわすとは思ってもいなかった。」
100年に一度の世界の経済危機を、氏はこう評したとのこと。
財政再建優先か財政出動による景気刺激かの二者択一を迫られている日本経済に、
今あらためて一石を投じているといえる。
いずれにしても、ちょっと刺激的な一冊となった。
PS:原書名「It’s Baaack!」。タイトルからしてかなりユニ-クである。訳者もびっくりするほどの柔軟さ。
これからの経済学には、こんな柔軟さがもとめられるのだろうか。
*「日本を元気にする30冊」より 『Voice』2009.1
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