♪新たな楽曲との出会い

画像「現代」の深部を切り取ったかのような詩集。
この詩集に触発されて新しい合唱曲が誕生している。

先日6/20、NHK-FMで放送された
東京混声合唱団定期演奏会(2010.3.20)で耳にした。

■『混声合唱とピアノための組曲“Z境(ぜっきょう)” 』
  水無田気流・作詞、篠田昌伸・作曲(2009)から
  ピアノ:中嶋香 合唱:東京混声合唱団 指揮:田中信昭

詩集の「Z(あとがき)」が、作曲のインスピレ-ショをかきたてたとのことなので、少し長くなるが記す。

<最近、小学生が、「将来の夢」に「有名人になる」を挙げることが多くなった、と聞いたことがある。職業なんか、どうでもいい。何かになることよりも、何でもいいから、とにかくユ-メイになりたいの、と。
彼らは知っているのだ。「ユ-メイジン」は「あちら側」にいる。今この世界には、存在しないも同然なのだ。この日常と地続きなようでいて、テレビモニタの画面以上に強固で分厚い「見えない境界線」に隔たれた、「あちら側」。あちら側こそが、ぼくの、あたしの、故饗。(中略)

あたしも、「あちら側」にいきたい!あちら側にいく道は見えないけれども、そこにいくには、見るよりも聞くよりも考えるよりも、何よりも、見られなくちゃならない。
だから、あたしは、絶叫する。
だから、ぼくは、絶叫する。
絶叫が環境となった世界を、私たちは生きている。
ここでは毎日、何もかもが、絶叫している。・・・・>

○第一曲:Z境(ぜっきょう)/告解(ハジマリ)
 「世界のような日常が
 日常のような世界を おおっていく・・・」で始まる。
 「Z」とは、臨界点であり、境界線である。
 それを越えると、すべてが入れ替わり、「君に私が見えなくなる」という。
 また「Z境」には、「絶叫」「絶境」、さらに「最後」「無(ゼロ)」などさまざまな意味が込められているとのこと。

○第二曲:世界同時多発トロ
 タイトルからして少々深刻な内容かと思いきや??「テロ」ではなく「トロ」?
 ミッキ-やミニ-、ドナルドが出てきたり、「なごむニャ」「涙がとまんニャい」「世界って、何だろうニャ」などネコ言葉が飛び出したり・・・。
 演奏会に立ち会った作詞者いわく、新聞の風刺的な4コマ漫画のような感覚で書いた詩を、真剣に演奏し、まじめに聞いてくださって、「どうしようか」と妙な感じがしたとのこと。

○第三曲:時間凍結弾(タイム・フリーズ・ミサイル)
 「私たちをやんわりとしめつける この幸福は 惨劇と等価なのだろう」
 「私たちをやんわりとしめつける この惨劇は 幸福と等価なのだろう」
 重い言葉が対の形で使われる。歌詞を見ず初めて聞く人に「トウカ」と発音される言葉の意味が、どれだけ伝わるかと懸念されるところか。

○第四曲:Z境/突然変異(ミューテイション)
 「日々にまつわる信念は ただちに
  記憶塊を破壊する
  だから
  たべるもの きるもの すむばしょ いくところ
  みるもの きくもの あいするもの にくむもの
  すべてが すべてが―――――― 」

 問題提起型の曲といえよう。まさしく「絶叫」で曲を終える。歌う者、聞く者にとっては、創作者からの何かしらの「答」が欲しくなる。演奏終了後、会場からの拍手までのしばしの沈黙に、一人ひとりが何かを感じ共有することが大切なのだろうか。

 「音楽が見事に詩と調和していた」との解説者のコメントが付された楽曲である。


 *朝日新聞 2006.4.14夕刊 文化・芸能面

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